三重県名張市                             高原生樹建築設計事務所

 

自然を取り込んだセンターコートを囲む複合商業施設

ハートアイランドへHP

 

Commercial  Complex HEART ISLAND Sekoguchi Nabari-shi Mie
DESIGN : SEIKI TAKAHARA

商環境デザイン賞入賞
BEST STORE OF THE YEAR  受賞 

INTER INTRA SPACE 入賞 
商店建築掲載

山間田園地帯に完成した ”都市のグリーン環境”

緑、太陽 あふれる空間

「ハートアイランドは」 は三重県名張市を東西に走る国道165号線、伊賀地方の奈良県境寄りに位置している。
大阪市内への通勤時間が1時間以上かかるにもかかわらず、ますます関西方面からの流入者が増え、この地は大阪のベッドタウンとなりつつある。現在もこの周辺には多くの新しい住宅地が増え、ロードサイドは大型ショッピングセンター、ホームセンター等の開発が目白押しとなっており、今後ますます発展が予想される地域である。
ただこの地もご多分に漏れず、コマーシャルベースのみで計画した、均一の価値観に基づいたデザインのみの商業施設が増えていく傾向にある。その中に都会からの流入者、感性豊かな世代に対応できる、施設を存在させ、人々に感動を与え何かが生み出されいくような刺激的なものとしたいし、そこでは日常生活を忘れ、田舎にいながら大都会のオアシスにいる気持ちを体験してもらいたい。
ここでは施設の中心に700屬離札鵐拭璽魁璽箸龍間を、まず設けた。このセンターコートがそれぞれのテナントにより付加価値のある空間を提供し、共有する広場が求心力を与える。建物屋根より流れ落ちる滝、湧き出る水が作る小川、落葉樹、季節ごとに変わる草花、灌木、太陽光線、中庭の散策、水遊び、螺旋階段の上り下り、今までごく普通に誰もが思い描く豊かな空間と意外性の提供。2階を南北に結ぶ21mのアーバンブリッジと、緩いカーブを描く螺旋階段は人々に移動することの楽しさを感じてもらう装置でもあり、観覧席でもある。
建物の色彩は極力抑え、四季を体感できるセンターコートの植裁計画に重点を置いた。商業主義一辺倒の均一の価値観とは異なる空間の提供こそが、これからの商業施設に求められていると思う。

 商店建築掲載  

外部環境を遮断したセンターコートからの視界
ロードサイドは好立地と言う反面、周辺にどの様な建物が建設されるか分からない不確定要素が高い場所。将来的には好まざる建物が出てくるケースもあり得る。そこで設計者から提案された建築計画は、ロの字型に配置された2階建て建物が、広々としたセンターコートを囲むもの。
レンガロックを敷かれた庭園には、水路が巡り、四季折々の樹木と花壇がレイアウト。腰掛けベンチとテレホンボックスがポイントを成す。2階通路から、中央ブリッジから、視覚を変えて眺める箱庭だ。 ”自然の動き” を取り入れるために設けられたという、静かに流れる ”せせらぎ” と、建物2階レベルから流れ落ちる ”滝” は庭園をいきいきとした空間に変えた。その人工庭園美の中に立つって上を仰ぐと、低層の建物が外部環境を完全に遮断して、広々とした天空が大きく残されていることに気づく。ここは、どこの街なのか。これが公園の中に街を形成するという狙いである。
参考のため、同様のコートヤード(中庭)を持つ低層商業建築を見学に、各地を回ったというオーナーは 「地価の低い地方都市だからこそできる、ゆったりとした、贅沢な空間を造りたかった」 と述べる。確かに、このようにゆったりとした建築空間は、もう都心に望むべきもない。仮に都心に有れば、間違いなく憩いの場となるであろう。

ロードサイドゆえに商業施設を計画
大阪中心部から途中、奈良を通りすぎ、山間を抜けると、伊賀盆地が開ける。この間電車で1時間以上、ここが「ハートアイランド」のある名張市だ、三重県西部に位置するこの市は、行政割では中部圏、経済的には大阪圏に属するという地域。
近年急激に人工が増加し、昨年の市単位の人工増加率は全国で第3位を占める。かって3万人足らずだった市は、昭和40ねんころより、近鉄不動産による住宅造成「桔梗が丘ニュータウン」に始まり、現在では多数のニュータウン計画が完了、本年5月現在で約3万所帯、人工約9万人となっている。大阪への通勤都市という面だけでなく、今まで大都市にあった民間企業工場が何社かそっくり移転し、工業団地を形成したのも増加の理由である。
地元出身で銀行マンの「ハートアイランド」オーナー・稲荷 進氏は、かねてより地元で事業を起こす計画を立て、まとまった事業用地を探していた。そして、ようやく名張市を貫く国道165号線沿いにその土地を見つけ、「交通至便なロードサイドに土地が購入できたから」テナントビルを計画した、という。
奈良、大阪、京都から流入してきた住人が多いという名張。昨今の住宅難がそうさせるのか。おそらく、好むと好まざるに関わらず、都市の豊かさや便利さとの引き替えに、ゆったりとした環境、ゆったりとしたマイホームを手にした人々だろう。住宅造成は進行した名張で有るが、付近には、いまだ大資本によるSCと個店しかない。こういった商環境が、どれほどこの微妙な心理を満たしてくれると言えるだろう。地元商環境の充実を望まない人はいないはずである。このような心理をオーナーは読みとったのか。脱名張をねらった女性ターゲットの商業ビル、しかも長い目で見た特徴のある複合商業ビルを指向した。

脱名張とは
満足のゆく空間を手にしたオーナーであるが、難しいのがテナント探しである。 「大都市圏の複合商業ビルの場合は、来客層を限定し、絞り込んだテナント構成でビル全体のターゲットを設定することができ、ビルのコンセプトやハイレベルのファッション性を追求することもできるでしょう。しかしこの名張という中堅地方都市においては、現実問題として、たとえば物販店を設けるにしても、ここにしかないというものを持ってこなければダメだし、飲食店はファミリー層へも幅広く対応する業種にしなければなりません」 と頭を痛める。
現在の状況は、平日は地元周辺の来客数が多く、昼間は主婦、午後は5時以降は地元企業に勤めるOLやグループ客が多くなるとのこと。週末は大阪、奈良からドライブの途中立ち寄るファミリー客やアベック客が多いようである。現在テナントは未入居の箇所も有るが、将来的には物販店1に対して飲食店、サービス店それぞれ1.5の割合にもってゆく考えのようだ。
名張に豊かな商環境を作る意味でも、当初の計画どおり、長い目でみて特徴のある複合商業ビルを目指してもらいたいものである。

「ハートアイランド」 データ
設計 高原生樹建築設計事務所 

施工 建築 錢高組名古屋支店 
内装 加芝建設 
在地 : 三重県名張市瀬古口字西地内

工事種別 : 一戸建て 新築
用途地域地区 : 準工業地域
建蔽率 : 制限60%> 実効18.77%
容積率 : 制限200%> 実効26.88%
構造と規模 : RC造 地上2階建
敷地面積 : 4620.49
建築面積 : 867.49
床面積 : 1階625.99屐。桶616.00屐々膩廝隠横苅院ィ坑広
工期 : 1989年11月1日〜1990年12月6日
施工協力 : 空調・給排水・衛生設備/多田工業 電気設備/吉田電機商工 
        厨房設備/三和厨房 家具/小船谷木工 サイン/アート工房 
        造園工事/緑花 クロス・カーペット/ショップエノモト
■営業内容
開店 : 1990年12月6日
営業時間 : 物販/午前10時〜午後8時 飲食/午前9時〜午後11時
定休日 : 第1・第3月曜日
電話 : 0595−63−5133
経営者 : (株)エッチアンドアイ 稲荷 進

■主な仕上材料
屋根 : モルタル下地アスファルト防水砂利抑え一部トップライト(サンカット/旭硝子)
外壁 : コンクリート打放の上塗膜防水剤吹付(アクアシール/製鉄化学) モルタル下地タイル貼(ひいろタイル/INAX) ハ゜ラヘ゜ット/吹付塗り材(ボンフロン/旭ガラスコートアンドレジン) サッシュ/スティールFP
外部床 : 砂敷きの上レンガロック敷(アズミック)
サイン : スチールFP
共用通路
床 : 1階/砂敷きの上レンガロック敷 2階/モルタル下地レンガタイル貼り(TOTO)
壁 : コンクリート打放の上アクアシール吹付
天井 : スチールメッシュ 2階/トップライト
■撮影 村瀬武男